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    ブログ (探偵の物語・探偵の仕事・その他)

    • 桜庭文次郎

    横領事件 ~下編~

    10日後、A社取締役武田氏から連絡が入り、今回は内田が金曜日夕方に「Z社」を訪問するとのことであった。


    月末の金曜日、文次郎とハジメは千代田区に在る「Z社」付近、最寄り駅から「Z社」に向かう経路にて張り込みを開始する。


    内田が最寄り駅方面から独り歩いているのを確認、気候が温かいせいか内田は汗をハンカチで拭いながら「Z社」へと向かっている。

    「Z社」が7階に所在するビルに内田は入り、エレベーターで上がった。



    陽が落ち、辺りが薄暗くなるとガラス張りの正面玄関から内側のエレベーターホールは確認し易い。


    整髪用で髪を固め、スーツ姿が様になる40代後半男性と内田がエレベーターから降りてくると、正面玄関から出て大通り方面へと歩いて行く。


    ハジメは歩いて両氏を追跡、文次郎もゆっくりと車輌を動かす。


    両氏は大通りに出ると、ちょうど客を降ろしたタクシーに乗車する。


    文次郎は前の信号機が赤になったばかりで追跡するタイミングを見余った。


    ハジメは後ろからくるタクシーに乗車して両氏が乗車したタクシーの追跡を開始した。

    ハジメからの連絡で「内堀通り」から銀座方面へと走行しているとの連絡を受けて追従する。


    両氏は銀座7丁目付近でタクシーを降車、南東方面へと歩いて行く。


    両氏は銀座8丁目に所在する寿司屋へと入店、後からハジメも文次郎の指示で入店する。


    文次郎は付近の駐車場に車輌を駐車すると同店へと入店する。


    内田と40代後半男性はテーブル席に向かい合わせで座っている。


    同テーブル席付近には衝立が立ててあり、ハジメが確保したテーブル席からは見えづらいが撮影は可能であった。


    文次郎は従業員に分からないよう、隠しカメラの焦点を両氏に合わせて録画を始める。

    両氏が入店して生ビールを飲み始めた後だった。


    40代後半男性が鞄から厚さ2cm程の茶封筒を内田に手渡すと、内田は中身を確認せずに自分の鞄へと入れた。


    文次郎は心の中で『ヤッター!』と叫んだが、周囲に気付かれないように小さくガッツポーズを取り、平静さを保った。


    両氏の席に食事が運び出されるが、時折、内田はスマホを操作している。


    小柄な20代半ばの見るからに銀座のホステスが入店すると両氏のテーブルへと近づき、内田の隣へと座る。

    同ホステスは40代男性とも面識はあるようだった。


    3名が新鮮な寿司や冷えたビールを堪能している姿を監視しながら、文次郎とハジメはウーロン茶と酒の肴、数点の寿司を食べる。



    40代男性が席を立ち、支払を行っているのを確認し、文次郎とハジメは足早に同店を退店する。


    ホステスの出勤時間に合わせて3名は同店を退店、銀座8丁目に在る某有名ビルへと入る。

    ハジメと文次郎は3名と一緒にエレベーターに乗車する。


    ホステスは4階のボタンを押した後、文次郎達に「何階ですか?」と尋ねたので、「6階です」と答える。


    3名は4階で降車して高級クラブ「H」へと入店、同時に文次郎は後から一旦エレベーターを降車して撮影をする。


    黒服が文次郎を見てお客かと思い、「いらっしゃいませ」と言うが、文次郎は間違えた振りをしてエレベーターに乗車する。



    文次郎とハジメは同ビルの1階出入口付近にて張り込みを開始する。


    今回の目的である内田と「Z社」の金品受渡しの確認、銀座でホステスと同伴、「Z社」による接待などの利益供与ととられる行為を確認している為、店内での監視・撮影は行わない。




    もうすぐ5月になるが、さすがに夜は少し冷える。


    月末近い為、銀座の街には多くのサラリーマンや銀座のホステスが行き交う。


    キャバクラの黒服が声を掛けてくるが、数時間も立っていると次第に怪しんで声もかけて来ない。



    内田と40代男性が入店してから4時間近く経つと、両氏とホステス数人がエレベーターを降りてくる。


    内田と40代男性を見送りに来た数名のホステスの中に同伴した20代女性が着替えを済ませて下まで来ていた。


    内田と20代ホステスは40代男性と挨拶を交わし、別れて銀座7丁目方面へと向かう。

    この時間帯、タクシーは付近でお客を乗車させることができない為、40代男性は新橋駅方面へと歩いて行く。


    内田と20代女性は銀座7丁目の某ビルへと入る。


    文次郎はエレベーターの行先を確認すると、2階で停車した様子。


    ハジメが2階を確認すると、バー「T」が営業しているが、他の飲食店は閉店しているため、両氏は同店に入店したと思われる。


    1時間程で内田と20代ホステスがエレベーターから出てくると、タクシーを停めて内田が乗車、後から20代ホステスが乗車する。


    文次郎とハジメもタクシーを捕まえて両氏が乗車したタクシーの追跡を開始する。


    文次郎はタクシー運転手に「あのタクシーを追いかけてください」と伝える。


    最初、タクシー運転手は黙って運転していたが、「刑事さんですか?」と聞いてきたので、「探偵です」と答える。


    タクシーの運転手も運転が上手い人も、下手な人もおり、今回は比較的前者ではあったが、後者の場合、指示しても上手くいかずに失尾となることが多い。



    内田と20代女性が乗車しているタクシーの後部ガラスから二人が頭を寄せ合っているのが確認出来る。


    内田の頭が20代女性の頭と重なり合った。


    ほぼ間違いなく二人は接吻しているだろう、ハジメはタクシーの後部座席からビデオカメラで撮っていた。


    内田と20代女性が乗車したタクシーが恵比寿のマンション前で停車、20代女性が降車すると、ドアが閉まり発進する。


    20代女性はタクシーを見送り、マンションへと入る。


    内田を乗せたタクシーは世田谷区の自宅方面へと走行していく。


    同タクシーが内田自宅付近に到着すると、支払を終えて内田が降車する。


    内田が帰宅、文次郎とハジメはそれを撮影して調査を終了した。


    これで、行動調査での状況証拠はある程度揃った。




    次の日、文次郎は口頭で状況を牧村弁護士、A社取締役武田氏双方にに報告、5日後に製本をした報告書を手渡す形となり、調査がすべて終了となった。


    数週間後、牧村弁護士から連絡が入った。

    内田は取引先の社員と組み、「A社」に水増し請求をしてプールした金を関与した人間と分けていた。


    最終的に被害総額は2億7千万円を超えていたらしい。



    文次郎が調査を終了して数日後、「A社」は内田を懲戒解雇した。





    数か月後、テレビ各社がニュースでこの横領事件の逮捕報道を一斉に報じていた。





    横領事件 ~下編~ 終




    この物語は一部の事実を元にしたフィクションであり登場する人物、団体名等、名称は実在するものとは関係ありません。

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