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  • 桜庭文次郎

物欲の代償

最終更新: 11月5日

年末もあと数週間に差し掛かり、クリスマスを前に街はにぎわっている時である、弁護士事務所からの連絡で企業社員の素行調査要請があった。


依頼者は都内上場企業の人事部からである。

提供された対象者本人の画像は新入社員の面接用写真であった。

黒髪のボブカット、少し丸顔でまだあどけない感じの写真であった。白いシャツに今で言う黒の就活スーツを着ていて真面目そうな女性に見える。



その日の外は比較的寒さは和らいでいた。

文次郎と敦夫は対象者勤務先に調査開始1時間前に到着し、下見調査及び打ち合わせを終わらせていた。


会社の所在地は東京都千代田に所在する5階建ガラス張りのビル、3階から5階に同会社入っており、2階には関連会社が入っている様子。

正面玄関から入り、右手にエレベーターが2基確認できる。


同ビル前の正面玄関から少し離れた場所にて文次郎は張り込みを開始し、後輩の敦夫は同ビル前の道路にて車輛運転席に乗車して待機する。


しばらくすると敦夫から無線にて連絡、タクシーが正面玄関から少し離れた場所にて迎車表示をして待機していると報告を受ける。

文次郎は敦夫にタクシー後方にて待機を指示。


対象者がエレベーターホールから正面出入口から出てくるのを確認。

白のコートの下からピンクのスカートが見え、セミロングの巻き髪、赤のヒール赤い口紅が派手さを引き立たせていた。


対象者は正面玄関からではなく、駐車場へと直結する出入口から出ると待機していたタクシーへと乗車する。


タクシーの追跡は比較的楽である。

対象者が後方を確認することが少ないからであるが、時にタクシー運転手が気付く時もあるので油断は禁物だ。


タクシーは北方面へと走行していく。


タクシーは御徒町の路地でハザードランプを出して停止する。


少しすると後部座席のドアが開き対象者が降車する。

対象者は停止したタクシーの前に所在する8階建ビルの非常階段を上がり301号室へと入室する。


文次郎はスマホで風俗店を探す。住所と一致した風俗店が確認できた。

同店は店舗のないホテヘルで、付近のラブホテルに男性をチェックインさせ、その部屋に女性を派遣して性的サービスを提供するシステムである。


店の情報を確認すると、対象者と思われる女性の写真が確認される。

店側から客を取るため従業員女性に指示があるのか、対象者も含めた数人の女性が店のブログを更新しているようである。


対象者の出勤日は月曜日、水曜日、金曜日の週に3日


目にはぼかしが入っており源氏名は「恭子」だが、間違いなさそうだ


付近にはラブホテルが3軒所在し、所々に風俗店も立ち並ぶ歓楽街である。

歩いていると呼び込み男性が通行している男性に声を掛けている。

文次郎にも卑猥な単語を並べて呼び込みを行ってくる。


対象者が同店事務所から出ると一人でラブホテルへと入る。


1時間後、同ホテルからからスーツを着た60代男性の左腕を掴んで対象者が出てくる。

60代男性はホテル前で立ち止まり、嬉しそうに対象者と一言二言会話を交わして御徒町駅方面へと歩いて行く。

対象者は立ち止まったまま60代男性が同駅方面へと向かう姿を、手を振って見送る。

60代男性が見えなくなると対象者は店事務所へと戻る。



十数分後、再び対象者は20代男性と手を繋いでビルから出てくると、隣のラブホテルへと入る。


1時間半程時間が経つと、対象者と20代男性がホテルから出てくる。

対象者は男性に向かい手を振るが、男性はそそくさと違う方向へと歩いていき、対象者は事務所へと戻る。



恐らく愛想の良い対象者は指名の多い出来る女性であろう、客からの評判は良さそうだ。



22時を過ぎて、対象者が同店事務所から出てくると、ホテルへと向かわず路地を曲がって少し幅の広い道路へと歩いて行く。

対象者は路上停車している車輌へと近づき、後部座席へと乗車する。


敦夫は追跡車輌を同車輌の後方へと停止させ、文次郎は後部座席へと乗車して追跡体制をとる。


少しすると同車輌は発進して路地から幹線道路へと向かい、幹線道路を北方面へと走行する。


対象者が乗車した車輌は進路変更を繰り返し、制限速度も大幅に超えて走行する。

敦夫の運転に文次郎は不安で仕方がなかった。


情報であった対象者の自宅付近まで来た為、車輌の追跡を中止してこの日の調査を解除とする。




金曜日に再び調査を行うと、対象者は退社後にタクシーにて御徒町近くのホテヘル店へと出勤する。


同日は3名の客(30代男性、30代後半男性、50代男性)の接客を行ったことを確認し、24時過ぎてから送りの車輌へと乗車して帰宅している。




当時、対象者は24歳の女性社員、地方の大学を卒業後に同社に新卒で入社、1年半で服装が随分と派手になってきた。

キャバクラか風俗で働いているのではないかと社内でも噂にもなっていた。


それだけで会社側が依頼するわけ無く、実は会社の役員役員が派手な服装の対象者が年配の男性と腕を組んで歩いているところを上野付近で目撃していたのだ。



文次郎は報告書を作成し、依頼者側に報告。

依頼した同社は社則で社員の副業を認めておらず、噂の事実確認したことで女性は解雇されたようである。


噂では、東京に出て、ブランド物を買い漁り、良いものを食べ、その生活に慣れてしまい借金までしていたようだ。

人は一旦生活水準が上がるとその生活に慣れてしまい、そこから生活水準を下げるということは難しいことなのであろうか。


新卒で上場企業に就職できたのに、代償を払ってまで充実した生活を送りたかったのか…






この物語は一部の事実を元にしたフィクションであり登場する人物、団体名等、名称は実在するものとは関係ありません。

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